誰にも言えない、だけど好き。
「じゃ、結衣ちゃんまたね~!!」
「また明日~バイバーイ!」
りんちゃんは学校から2分くらいのとこに家があって、めちゃくちゃ近いらしい。
駅に着くと、エナメルバッグにうずくまって寝ている、見なれた後ろ姿。
「かなこぉ!!!!!」
「うぎゃおわっ!ちょ、え、結衣かよ…!
やめろし!」
悲鳴が個性的すぎるこの人は、加奈子こと齋藤加奈子。
幼稚園からだから…かれこれ13年の付き合い。
とくに何も話してなかったのに、
同じ高校を志望してたから、
後期入試のあと偶然会ったときはホントにびっくりした。
「そういえば加奈子さーん、おともだちもうできてたねー」
「結衣さんこそー、なにやらツインテール女子と楽しそうだったじゃないのー。」
「うん、りんちゃんって子。
ま、やっぱ加奈子がいちばん安心だわー」
「それそれー。てかさ、あれ中学のときからバレー部で会ってたし、ほぼ新ともだちじゃないしねー。」
「とりあえず、体育のときの2人組とかで困んなきゃいいかな。」
「ね。」
加奈子は、こんなゆるゆるトークが出来る
唯一の相手。
いなきゃ困るけど、おたがいずっとベタベタ、って訳でもない。
親友?というか家族というか…
とにかく、3年間はまた加奈子にお世話になるなぁ。
「結衣~電車きたよ。」
加奈子のものすごい腕力で引っぱられて、立ち上がると
うすい黄色に白と緑のラインが書いてある、
だいぶ汚れた車体。
体験入学のときと入試のときは車だったから、
きょうがこいつとは初対面。
3両しかないけど、人は少ないから
けっこうガラガラ。
「らっきー!座れるー!」
席を確保してすぐに、心地よい電車の揺れが眠気を誘ってくる。
今日1日の精神的な疲れで、
加奈子が一生懸命バンドの話を力説しているのを無視して、
私はふかーい眠りに落ちていった…
加奈子ゴメンよ…