狂犬の手懐け方
「どっかの誰かのおかげで、学年中俺と君の噂で持ちきりだよ。
で、これを機に俺と付き合ってくれない?」
「は?」
意味が理解できない。
何言ってんだコイツ。
「何も君のことが好きってわけじゃないんだけどね。付き合ってるふりをするだけだから、勘違いしないでよ」
「……」
「俺の得になることだけじゃない。君にもメリットをあげる。
実家の喫茶店があまりうまくいってなくてお金に困ってんでしょ? いいバイト教えてあげるよ。
俺は俺で女子の告白を牽制できるし、君もお金を稼げる。ウィンウィンだ」
「なんで知ってる!」
両親が喫茶店を営んでいる。人のいい両親の経営は下手で家計は火の車だ。既に借金まである始末。
もちろんこんなこと誰にも言ってない。まして相馬になんて言うわけない。
「なんでって…お金貸してるのうちだしねぇ」
相馬の家は金融関係らしい。サラ金と呼ばれるアレだ。
うちの両親はなんで、よりにもよってこいつのとこで借りたんだ。