狂犬の手懐け方
「どうして俺にそんな話を?」

「だって大槻くん、相馬くんと仲良いでしょ。
……協力してほしいなって」

「協力?」

「相馬くんとヒカルを本当の恋人にしたいの」

耳を疑った。

「相馬くんって、ヒカルにとって特別なの。ヒカルからすれば会うたびに絡んでくる面倒な奴かもしれないけど。殴られたって怪我したって、ヒカルに関わろうとする人なんて他にいない」

確かに。でもそれを言うなら篠原も十分奇特だと思う。

「犬塚は相馬のこと嫌いなんだろ」

「嫌よ嫌よも好きのうちってね。
ヒカルは、ヒカルにとって相馬くんが特別だって気付いてない。それに気付けば、もしかしたらーーって私は思ってるの」

俺としては偽物の恋人関係で浮き足立ってる相馬を見るよりも、本当に恋人同士になって幸せな相馬を見たい。
俺が、友達が幸せになることを嫌がるわけがない。

「なんでお前は二人を恋人にしたいんだ?」

「友達には幸せになってほしいでしょ。

それに、おもしろいから」

また悪戯っぽく笑った。
どちらが本心なのかはわからなかった。
いや、きっとどちらも本心なのだろう。

「わかった。協力する」

俺は篠原にそう返事をした。

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