狂犬の手懐け方
「凛、悪いけど先教室戻ってる!」
ヒカルは弁当箱を袋に入れてそう言った。あ、私を置いていくんだね。まぁいいけど。
「また後でね。次の数学、課題提出あるからやっときなよ」
一応声をかけておいた。それも正解だったみたいだ。だって、ヒカルはやらなきゃって顔をしたから。
「えー、もう教室行くの?」
「お前が来たからな!」
「ひっどい彼女。
あ、そうそう。ほらこれ、プレゼント」
相馬くんは白い袋からパックのジュースを取り出し、ヒカルに手渡した。
それはイチゴオレ。ヒカルの好物だ。
「え、くれんの?」
「俺牛乳嫌いだから返さないでよ」
「えっと…うん、ありがとう」
ヒカルは小さく微笑んだ。ほんの一瞬だけ。
微笑んだ後、はっとしたような様子で荷物を持ち、屋上から去った。