狂犬の手懐け方

相馬樹



五限目が終わり、休み時間。

トイレから教室に戻る途中の俺は、体操服姿の篠原と犬塚に会った。

大人っぽい篠原には体操服が似合わないし、子どもっぽい犬塚は体操服が似合いすぎている。


「げっ」

俺を発見した犬塚は嫌悪感丸出しで俺を見た。

「そんな顔しないでよ、傷付くなぁ」

本当は傷付かない。
そんな顔も含めて愛しく思っているから。

「今から体育? お疲れ」

通り過ぎる時、犬塚の肩にポンっと軽く手を置く。このくらいのスキンシップは許してほしい。

「じゃあね」

俺は二人に向かって小さく手を振った。


その時だった。

犬塚はふらっと体を揺らした後、廊下に倒れ込んだ。

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