狂犬の手懐け方
「……のぼせたみたいね。時期に目を覚ますわよ」
ベッドで眠る犬塚を見て、保健室の先生はそう言ってくれた。とりあえず息をつく。
よかった。大したことじゃなさそうだ。
「こんな季節にどうしたのかしらね。やっぱりこの子、不思議」
先生はニヤリと笑う。何かを企んでいるかのような笑み。
確かに、のぼせるようなことなんてなかったはず。
二月後半と言えどまだ半袖では寒い季節に、半袖体操服で行動していた。
体を冷やすことはあれど、のぼせることなんてーー。
「まぁいいわ。
とりあえず私、今から出張なの。その子が目を覚ますまでいるのか知らないけど、とにかく出る時はここの鍵を閉めておいて」
先生はそう言いながら白衣を脱ぎ、コートを着る。
相変わらずグラマーでエロい。
「あ、そうそう。
ここは学校の保健室だからね。ベッドの用途、間違えないように」
ギクリ。
その忠告が、以前ここのベッドを借りて営んでいたことを思い出させる。
……ばれていたらしい。
「やだなぁ。俺がそんなことするわけないじゃないですかー」
軽い口調で嘘をついたけど、きっとこの先生は騙されてくれないだろうなぁ。