狂犬の手懐け方

「姉ちゃん」

アキラは掃除道具を片付け、私に袋を渡した。深い緑色の袋には書店という文字が見える。

「これ、どうしたの?」

「なんか店の前にいた人がくれた。姉ちゃんに渡せって」

そしてアキラは耳打ちをする。

中学一年のくせに身長が170を越えているアキラは私との身長差も大きい。
私に合わせて屈んでくれるけど、いつか腰を痛めそうだな、と思う。

「男の人だったけど彼氏?」

「な!」

いつも通りの無表情でそう尋ねてくる。真意は計れない。

とりあえず大きな声で言わなかったのは、お父さんやお母さんに気を遣ってくれたんだと感じた。

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