狂犬の手懐け方
順風満帆
犬塚ヒカル
「おはよ、狂犬ちゃん。送ってくれない?」
「おはよう樹」
いつも通りの朝。
通学路の途中にあるマンションの入口に相馬樹が立っていた。
挨拶を返してやると樹は固まった。そして動かない。
「昨日は悪かったな。あと漫画ありがとう。
後ろ乗れよ。送ってやるから」
樹は動かない。一体どうしたと言うんだ。
「おい、樹? 遅刻するぞ」
焦点の合わない樹の肩を軽く叩いた。
すると頬を少し赤く染めて私を見る。
樹は一度深く呼吸をしてから口を開いた。