狂犬の手懐け方

「なんで名前?」

自然に訊けたかな。わからない。今は自分を客観的になんて見られない。

「昨日の漫画で、付き合ったアカリ達が名前で呼び合うところから始めてたから」

なるほど、そんなシーンがあったんだなぁ。読んでないから知らない。

「それが恋人らしいのかはよくわからないけどな。それなら私と凛だって恋人だ」

その認識が小学生くさい。
俺はそこに恋愛感情があるのが恋人だと思う。
思うだけで言わないけど。

「ってことだ。だからお前も、私を名前で呼べよ」

「え?」

犬塚は返事をした俺をキョトンとした顔で見る。
そうか、呼び合うっていうのはそういうことだもんね。

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