狂犬の手懐け方

「よし、じゃあ貼るよ」

湿布を取り出した相馬が声をかけ、犬塚の足に湿布を貼った。
湿布のにおいが鼻につく。臭い。

「この湿布においすごいな。
まぁありがとう。おかげで痛みもましになった気がする」

犬塚はそのまま靴下と靴を履いた。そして何事もなかったかのように立ち上がる。

……いや、そんなすぐに効くわけないから。絶対まだ痛みあるはずだから。

「あんまり無理しちゃ駄目だよ」

「これくらい平気だし」

「痛みって、防衛反応らしいね。それも感じられないなんて、近いうちに君の体壊れるんじゃない?」

「は? 痛くないのはいいことだろ」

馬鹿にしたように笑う犬塚が一番馬鹿だと思った。きっと相馬も同じことを思ったはずだ。

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