狂犬の手懐け方


「そういや犬塚が言ってたんだがな」

「ん?」

「お前のこと、優しいけどかなり捻くれてるってさ」

「あら、図星」

大槻くんはじっと私を見る。何だろう。

「お前と相馬って、ちょっと似てるよな。雰囲気やらなんやら」

「そうかな。確かにヒカルよりは相馬くんよりの人間かもね」

「……」

再び沈黙。何が言いたいのかわからない。

「……お前、自分と似た相馬に幸せになってほしいんだろ」

大槻くんはそう言った。

前大槻くんに伝えた理由以外に、もうひとつ理由があった。
それは今大槻くんが言ったこと。

私は私と似た相馬くんが幸せになることで、私も幸せになれるんだってことを証明したかった。

よくわかったね、大槻くん。
私は何も答えず笑みを浮かべた。

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