元カレ
家に行きたいと言った時も、彼は頑なに拒絶した。
思い詰めたような表情をしながら……。
家族の話だって絶対しようとしなかった。
私がたまに家族の話をしたら、すごく複雑そうな顔をした事もあった。
「家族と仲良くないのかな、とか……なんとなく感づいてたのに、私は相談に乗ろうとしなかった。本当に薄情な女でしょ?」
本当は彼の力になる自信がなかっただけ。
「薄情じゃない。あえて何も聞かなかったのは、玲奈なりの優しさだと思ってる」
「都合の良い解釈しないで。とにかく帰る」
「ちょ、玲奈っ……」
走って外に出た。
彼の家は私の家とあまり離れてない古いアパートだった。
とりあえず、道に迷う事なく帰れそう……。