君を追いかけて
だいぶ気持ちがおさまったころ
誰かがカーテンを開ける音がした
そこにいたのは杏里だった。
「香穂…来るのおそくなってごめんね。」
吉澤 杏里、あたしの大事な親友。
茶色がかったボブヘアーで、真っ白い肌。
長いまつげで、どんな人にもやさしく接する杏里は、そりゃもう男子からも女子からも好かれる存在で。
「そういえばさ、あたしがかげでいろいろ言われてるの杏里がガツンって、言ってくれたことあったよね」
「そんなことあったね…」
あの時、
杏里はなんであたしなんかにかまってくれるんだろう。きっとかわいそうとか思ってるんだなんて考えて
でも、杏里とはずっと一緒にいたいって気持ちもあった。
そんな気持ちが変わったのは中2の冬
杏里とクラスの女子達が話しているのを聞いてしまった。
「杏里さ、なんで香穂にかまうの?」
「あんなクラスでも浮いてるやつと一緒にいると杏里までけがれちゃうよ?」
みんなが口々にそうだよとか
杏里がかわいそう。とか言う声が聞こえる中で、杏里がいままで見せたこともない表情を浮かべた。
「私がただ、香穂といたいだけ。」
「え?」
「香穂は、おとなしいとこはあるけど、一緒にいて楽しいし、誰より友達を大切にする心を持っているのは香穂だと思う。」
なんだか見ているこっちまでスッキリした。
杏里がこんな風に想ってくれてたなんて…
そのときあたしの心の中で
何かが変わった。
「あの時はありがとね。」
思い返すと、とても嬉しくなった。
杏里の大切さを改めて実感した。