ラブモーション
「お前さあ・・・」
呆れたような、ため息混じりにそう呟くと永倉くんは、力いっぱい彼女の足を引っ張った。
そして、床に叩きつける。
彼女の悲鳴が、教室中に響き渡った。
「い、いたっ・・・いたいぃぃ」
痛々しげに蹲って、床にぶつけた肩を押さえながら涙を零す彼女。
周りのみんなも、これにははっと息を呑んで、額には汗が浮かんだ。
「お前らも、みんなそうだ。」
相変わらず冷たい瞳で淡々とそう述べる永倉くんの意図が読めないのか、みんなキョトンとした顔になっていた。
――何が言いたいのか、分からない。
そう言いたげな顔をして首を傾げている。
「こいつに勝手になんかしたら、俺が許さない。
こいつになんかやりてんなら、俺に許可もらってからにしろ。」
これは完璧に永倉くんのエゴだ、と私は悟った。
ゴクリと唾を飲んで、何度も首を縦に振るクラスメイトを見つめながら、私はぎゅっと手を握った。
「こいつに触るな、こいつに近づくな、こいつに話しかけるな。
こいつは俺んのだ。こいつになんかするんなら、俺に言ってからしろ。」
――怖い。
背中にゾクリと憎悪を過ぎった。
君が許可したら、私は何にでもされてしまうの?
私は物じゃないんだよ・・・・永倉くん。
私は涙を流して、そう思った。