ラブモーション
瞼を上げる。
意識が戻った、と思った瞬間、鼻を擽ったのはとてもいい匂いとはいえない臭い。
うっすらと目を開けてみると、煤けた天井が見えた。
ばっと起き上がって辺りを見渡す。
少し汚れたマットの上にいること、今にも壊れそうな平均台、煤けた壁面。
彼女達に連れてこられたところと同じだと確認をすると、私はほっと息を吐いた。
項垂れるように首を垂れさせて俯く。
じわりと目尻に涙が溜まる。
グスリと鼻を啜るのも束の間、後ろから弾むような声が聞こえた。
「どう、調子は?
少し強めに殴りすぎたね、軽くでいいって言ったのに。」
ばっと振り返ると、そこには笑顔を浮かべうことなく無表情で、こちらを見下ろす永倉くんがいた。
内心パニックに陥りながらも、なんとか落ち着こうとキョロキョロと眼を動かし続ける。
落ち着きの無い私に不審感を抱いたのか、ぐっと眉を額に寄せて疑わしげな表情を浮かべる。
九段もある跳び箱の上に乗って、胡坐を掻いている永倉くんをチラチラと見上げながら、私は落ち着きなさげにもぞもぞと体を動かした。