ラブモーション
校門を目の前にして、ごくりと息を呑む。
周りの人たちから見れば、今の私は不審気回り無いだろう。
肩にかけた鞄をしわが作れるくらいにぎゅっと握り締めて、校門から足を進める。
校舎内へと入れば、そこは昨日も通ったばかりの昇降口が目の前に広がる。
他愛もない話をしながら内履きへと履き替える生徒達。
どうかクラスメイトに会いませんように、と祈りながら、私は俯き加減に自分のロッカーへと足を進めた。
恐る恐るロッカーと向き合い、取っ手を握り締めて勢いよく開ける。
そこには私の内履きだけが入っていた。
「よかった・・・・。」
ほっと息を吐く私に、後ろから声が降り注がれた。
「黒木?どうした、もう時間無いぞ。」
ばっと後ろを振り返ると、そこには生活指導の清水先生がいた。
「あ、先生・・・・」
「どうした。早くしないと、HR活動遅れちゃうぞ。」
ポンと私の頭に手を置いてから去っていく清水先生。
周りにいる生徒の数は少なくなっていた。
こんな平凡な時間がいつまでも続けばいいのにと、私は心の中で深いため息を吐く。