ラブモーション
今から八年前。
ある晴れた早朝のことだった。
マンションの一番上の階の一番端の部屋の中で、私はただ一人、リビングでポツンと立っていた。
ザーザーと電波が悪いのか、雑音を立てながら歪む映像が映っているテレビ。
その音だけが、静寂をきっていた。
キッチンのテーブルには、包丁が置かれていた。
刃渡り十五センチほどの普通の包丁だった。
だけど、普通の包丁と違うのは・・・・真っ赤な血がついているということ。
そして、リビングのダイニングテーブルによりかかるようにしてうつ伏せになっているのは、私の叔母だった。
引き裂かれた服の中は、どろどろの血でめちゃくちゃになっていた。
殴られたような無数の痣と、腹とわき腹についている傷が致命傷のようだった。
私はボーっと叔母の無残な姿を見つめると、たどたどしくよろつく足取りで二回へと繋がる長い階段を上った。
寂しい。
この静かな空間がどうしようもなく寂しい。
兄の部屋の扉のドアノブにてをかけ、ゆっくりとそれを捻る。
いつの間にか、外には雨が降っていた。
土砂降りの雨が、窓ガラスを強くたたく。