ラブモーション


黙って私を見下ろす永倉くんの視線が痛い。

怖い、怖い、何をされるか分からないから、怖い。


三年に進級してから急に始まった、私への虐め。

こんなこと、言っていいのかどうか分からないけれど、私は高校生活一年も二年も平凡に暮らしてきた。

虐めなんて、今の今まで受けてきたことなんて無かった。


永倉くんはみんなから人気で、モテて、秀才で。

とにかく、三年になった今、永倉くんにはもう怖いものなんてなしだった。

憧れもあったかもしれない。だけど、永倉くんに抱いてしまったあの気持ち。


その分、永倉くんと一緒のクラスになれて嬉しかった、嬉しかったのに・・・。


新学期の次の日、学校へ来て教室へと入ってみると、投げつけられた雑巾、雑巾、雑巾。

あのときの私には考えられなかった。


自分がいじめられるなんて。


永倉くんが私を虐めるようにみんなに言っていたのは、なんとなく分かった。

だけど、永倉くんが直接私に虐めることはなかった。

ただ、みんながやっているのを見つめて、真顔で私の様子を伺うだけ。


朝来ると、いつものように扉が閉められていて、嫌になる。

勇気を振り絞って、淡い願いも秘めて扉を開けるも、水をかけられたり、チョークのカスを被ったり。


顔を上げると、そこにはいつも真顔の永倉くんが視界に入る。

ちょうど中央の私の机に腰をかけて。


毎日、永倉くんは私の机に座っているんだ。

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