この気持ちは、気付かれない。
ーーーーピンポーン
その音に、意識が浮上する。
ーーピンポンピンポンピンポン
「あ"ー誰だようるさいな…」
寝起きが悪いのは自他共に認める。
いつにも増して不機嫌顔なのも認める。
寝不足だし、たぶん二日酔いだし、しょうがない。
「はい……」
「おっ!いるじゃん。てかあれ?皐月、寝起き?」
その瞬間、寝起きのテンションよりもさらに機嫌が悪くなったのは自分でもわかった。
「…なんで、きたわけ。嫌って言ったよね?」
「いーじゃん?寒いからとりあえず入れて。」
自然な動作でわたしの腰を抱いてするりと部屋に入ってきた。普通に鍵も閉めて、靴も脱いで。
「……それは玄関に置いてて。」
「あーはいはい。あ、飯の材料も買ってきたから鍋作って。」
小さいスーツケースは外をゴロゴロしてきただろうから部屋には上げさせない。
っていうかあんたはなんなの。勝手に冷蔵庫を開けるんじゃない。
「あーやっぱなんもない。買ってきて正解だったわ。」
じゃない。わたしの家だぞ、ここは。
「…っんで、わたしのとこなの…」
頭を抱えてずるずるとその場に座り込んだ。
昨日の今日で、この人に会うなんて。
そんなはずじゃなかった。