この気持ちは、気付かれない。
「弘くん、遅かったね。荷物置いてきたの?」
「そ。さすがにスーツケース持ったままここ来んのも邪魔だし。」
「そっかそっか。ふふ、久しぶりだねえ。」
「そーだな。」
ふんわりと微笑む優衣の顔を正面から見て、また苦しい。
その隣にいる秋の辛さの滲む表情を見るのも苦しい。
なにも考えたくなくて、2杯目のビールを一気に煽った。
「皐月、なに?やけ酒?その割には痩せたんじゃね?」
にやにやしながら、山本くん。
「皐月ちゃん、相変わらずペース早いねえ。」
わたしなんか、まだビールも飲めない…と優衣。
「んー…優衣はビールなんか飲めなくてもいーの。可愛いから。」
ちびちびカシオレ飲んでる優衣が可愛い。
「言われてみれば、皐月、なんか痩せた?」
今気がついた、という感じで秋。
「なんか最近よく言われる。別にそんなことないと思うんだけど。」
潤くんにも言われたなあ…
「私もちょっと思ったんだよね…前にも増して色気がすごいというか…」
「なに言ってのよ。そんなもん持ってないよ。」
ビールは止めて、ハイボールに移る。
「今日は全身黒いからじゃない?着やせ効果よ。」
「え〜皐月ちゃんそんなのいらないじゃない。」
ふふふ、と優衣が笑う。
そんな様子を隣で優しく見てる秋を、わたしは見たくない。
そんな目でわたしは見られたことない。
笑顔だってその他大勢に向けられるのと同じもので、わたしだけの表情なんてない。
…いつまで経っても変わんなくて、いつまで経ってもわたしはそれを欲したまま。
成長しないな、と思って心臓らへんがぐるぐると気持ち悪くなった。
近況報告に、昔話。話題は尽きることがなくて、時間がたつのは本当に早い。