この気持ちは、気付かれない。
「皐月、」
ウイスキーを飲み終わった頃、声がかかる。
「優衣が潰れて、皐月を呼んでる。」
「優衣が?」
わたしを迎えに来たのは、山本くんだった。
「戻ってこねえから様子みたら、マスターと話してたんだな。」
「兄貴の話とかね。」
あー、と言って納得した様子だ。
みんなは兄貴と会ったことはないけれど、ここが兄貴の行きつけの店だったってことは話した。だからだろう。
「優衣、大丈夫?」
半個室になっている席に戻ると、優衣は秋にもたれて潰れていた。
だけどわたしの声に反応して、目を開ける。
「皐月ちゃん……大丈夫なの?」
「わたしはもう大丈夫。ありがと、」
心配してくれる優衣に、笑いかけた。