この気持ちは、気付かれない。
口を尖らせて拗ねたように怒られてしまった。
だけどそれって、本当にただの惚気じゃない。
「確かに山本くんはかっこいいよ?けど優衣だって大学でモテるでしょ?」
「私は……」
「2年になってからもう何人に告られた?大学入ってからだったらもう覚えてない人もいるくらいなんじゃない?」
「そんなの…だって私は弘くんが好きなんだもん。」
うる、と悲しそうな表情になる。
「…だから、山本くんも優衣と同じなんじゃないの?例え何十人に好かれてたって優衣がいるんだから、ね?」
「…皐月ちゃん、」
「ん?」
「……。」
「なに?どーした?」
急に黙ってわたしのことを見つめる優衣の瞳に、少し居心地の悪さを感じてしまう。
可愛い子が見つめてくると、照れる以前に緊張してしまうものなのか。
「…私なんかより、皐月ちゃんの方がモテるでしょう。」
「…はぁ?」
「恋愛のスペシャリストみたいだもん。私には言わないけど彼氏がいるの?」
「なーに言ってんの。モテもしないし、彼氏もいないよ。」
突然何を言い出すのかと思った。
わたしには後ろめたい記憶があるから、優衣に問い詰められたらきっと冷静ではいられない。
「彼氏がいないなんて!嘘でしょ!しかもモテないなんてもっと絶対嘘!」
「いやいや、本当だってば。」
「大学入ってから何回告白されたの!言ってみて!」
急に強気の優衣が出てきて、少し笑いそうになる。
この子はたまにこんな風にテンションが上がって怒った風な言い方をする。
でもただ単に興奮してるだけだっていうのは、わたし達の間では常識だ。