この気持ちは、気付かれない。
大学に入ってから、弘が遠くに進学したのをいいことに、優衣と2人で会うようになった。
優衣の話をたくさん聞いた。
だけど。優衣の話は皐月と弘のことばかり。
「皐月ちゃん最近忙しいみたいなんだけど、何か知ってる?」
「弘くんバイト始めたらしいよ、」
「皐月ちゃんに会いたい!」
優衣は、きっと俺に興味なんかないんだろうなって思った。
俺が優衣の話を聞くばかりで、優衣が俺のことを聞いてくることはあんまりない。
そんなことに気付いて柄にもなく悲しくなったりもしたけれど。やっぱり優衣の笑顔を見ると、好きで好きでしょうがなくなった。
だから、少しでも意識してもらえるようにいろんなところに誘ったし、夜景を見に行ったり映画に行ったり、デートっぽいこともたくさんした。
……それでも優衣は、なにも気付かないみたいだった。