この気持ちは、気付かれない。
だけど、泣きながら優衣に謝り、崩れ落ちていく皐月を見て、何か俺は重大な間違いをしていたんじゃないかと思った。
そういえば、皐月は前会った時よりかなり痩せた。
元々細かったけど、今は折れそうだ。
顔色もさっきから悪かったし、体調でも悪いのか。
ーー皐月の涙ながらの「ごめん、」を聞いて、何か人に言えないような悩みを抱えてたんじゃないかと、気付いてしまった。
「秋!俺は皐月連れて帰っから、優衣頼むな。」
「……は?」
意識を失ったらしい皐月を横抱きにして、荷物を持って弘が立ち上がった。
「ちょ、彼女だろ!なんでお前が皐月を連れて行くんだよ!」
「うっせえな、お前皐月の家わかんのかよ?」
そう言われて、言葉に詰まる。
っていうか、じゃあお前はわかるのかよ。
「とにかく、優衣酔いすぎだから。ちゃんと連れて帰って。」
「わ、わかったけど……」
「優衣、わかってんだろ?悪りぃけど、俺は皐月連れて帰っから。」
いつもよりも強い弘の口調に驚いた。
わかってるだろ、ってなんの話だよ。
優衣の、悟ったような諦めたような表情に心がざわついた。
「ありがとう、弘くん。皐月ちゃんをよろしくね。」
「悪かった、」と言い残して去っていった弘に、俺は意味がわからないままだった。