この気持ちは、気付かれない。
ーーー秋に焦がれる皐月に焦がれた俺。
当時から思っていたが、考えるとなんて不毛な関係だったんだろうか。
少しの変化が現れたのは、俺が皐月の泣いている姿を見たのがきっかけだった。
たまたま行った保健室で、皐月は声も上げずに泣いていた。
養護教諭は知ってたらしい。
色んなものが溜まり過ぎると泣きに来る、と言っていた。
今でもはっきりと覚えてる。
俺は最低だけど、皐月を諦めきれなかった故の行動だと思ってる。
「なんで泣くの。」
「ほっといて。」
目を真っ赤にしている皐月は、いつにも増して綺麗で、煽情的だった。
「秋のことが、そんなに好きなの?」
「…っ、」
目に見えて秋の名前に反応する皐月を、めちゃくちゃに傷つけたくなった。
あんな、優衣のことしか見えてないような男が、いいの?俺には気付かないくらいに?
「…俺が、秋の代わりになってあげようか。」
我ながら、最低な発言だな、と思う。