この気持ちは、気付かれない。





大学に入ってしばらく経ってから、一人暮らしを始めた皐月はきっとモテるだろうと思ってた。




大学にも慣れて、高校よりは心身ともに少しは大人になった男どもは、根拠のない自信を持ち始める。


高嶺の花にも、手が届くような気がするかもしれない。


実は押しに弱くて、儚げな皐月は無理矢理、ってことも無いとは限らない。

男は狼。そんなのは自分が身をもって実感してた。







他の男を見ている皐月を見るのが辛くて遠い大学を選んだのに、すぐ会える距離にいないことが辛かった。


そばに居られれば、男を近づけさせなかったのに。






そんなことばかりを考えて過ごしていたから、帰省のたびに向かう皐月の家に男の影がないことに、毎回毎回懲りずに内心喜んでいた。





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