この気持ちは、気付かれない。







小さい頃の夢を見た。

母さんと、兄貴がいた。











「わたしの可愛いメイ。貴女が誰かを愛する時、誰かも貴女を愛しているわ。もしも貴女が孤独でも、母だけは貴女を想っているわ。」











幼い頃、母が日本語を話していないとは気付いていなかった。



彼女はフランスとのハーフで、結婚を期に日本に来た人だったから。

家の中では、父とは日本語、母とはフランス語で会話するのがわたしたちには普通だった。








…母は、わたしのことを“メイ”と呼んでいた。



それは、わたしの愛称。







母の言葉はいつもわたしには難しくて。



幼い頃から聞いていたフレーズはわたしの脳裏に染み込んでいたはずなのに、いつの間にか忘れてしまっていた。












< 58 / 111 >

この作品をシェア

pagetop