この気持ちは、気付かれない。
小さい頃の夢を見た。
母さんと、兄貴がいた。
「わたしの可愛いメイ。貴女が誰かを愛する時、誰かも貴女を愛しているわ。もしも貴女が孤独でも、母だけは貴女を想っているわ。」
幼い頃、母が日本語を話していないとは気付いていなかった。
彼女はフランスとのハーフで、結婚を期に日本に来た人だったから。
家の中では、父とは日本語、母とはフランス語で会話するのがわたしたちには普通だった。
…母は、わたしのことを“メイ”と呼んでいた。
それは、わたしの愛称。
母の言葉はいつもわたしには難しくて。
幼い頃から聞いていたフレーズはわたしの脳裏に染み込んでいたはずなのに、いつの間にか忘れてしまっていた。