風
日曜日。
ふと、明け方に目を覚ました。
今日も休みだ。
まだまだ寝ていられる。
そうしてもう一回寝なおそうとしたところで、思い出した。
昨日感じた違和感が、今日は、ない。
がばっと勢いよく体を起こした。
ベッドの上には俺一人だった。
額に手をあててどういうことだと思考を巡らせた。
いなくなった。
シーツが冷たい。ということは随分前に出ていったのだろう。
出ていった?
…違うだろ、帰ったんだ。
自分の居場所に。
なら、これでよかったんだ。
これが正しいんだ。
間違ってるのは、いなくなって動揺してる俺だ。
手を離さなければよかったと、後悔してる俺だ。
全部全部夢だったのかも。
だとしたら俺寝すぎだろ。金曜の夜から今まで寝てたことになる。
んなわけねえ。
なんだかものすごく体の力が抜けて、ベッドに大の字に倒れこんだ。
そしたらシーツがふわっと揺らめいて、甘い香りがした。
あいつの香りだ。
夢なんかじゃない、確かにここにいた証拠だ。
キンモクセイみたいな香り。
それは優しいけど、もう俺にとっては悲しい香りになってしまった。
心にぽっかり穴があいたような気持ちで、肺いっぱいにその香りを吸い込んだ。