風
月曜日。
重い体をどうにか起こす。
今日は仕事だ。また一週間が始まる。
家を出るときにドアのそばを何度も見てしまうのはいつになったら辞められるんだろう。
会社に着いて、自分のデスクに座る。
これが俺のもともとの日常だ。
働いて、寝て、働いて、寝て。
そんなつまらない生活を彩ったあの出来事は、なかなか頭の中から出ていかない。
…はやく出ていってほしい。
俺が俺じゃなくなってしまう。
だいたい、帰るなら帰るって一言ぐらい声かけろって。
ほんと自分勝手な奴。
急に泊めてくれだの、海に行きたいだの言って、しまいには抱き付いてきて。
泣くし、笑うし、告白なんてしてくるし。
俺も、キスしちまうし。
「佐伯さん、ちょっといいですか」
後輩だ。
「どうした?」
「この資料なんですけど…」
よし、今日は忙しくしとけばいい。
そしたら余計なこと考えずに済むだろ、この野郎。