風
自宅マンションに辿り着いた。
エントランスの扉をくぐり抜け、エレベーターのボタンを押す。
階数表示のランプをぼーっと眺める。
すると、ふわっと風が吹いた。
コンビニの袋がガサガサと音を立てた。
ただでさえ乱れている俺の髪が余計に暴れる。
なんだ?
エントランスは完全に屋内になっている訳ではないので、風が入ってくるのはわかる。
だけどなんだ、この甘い匂い。
小学生の頃を思い出すような…そうだ、キンモクセイみたいな。
エレベーターが到着し、頭を振りながら乗り込んだ。
4階のボタンを押してドアが閉まったのを確認して、目を閉じた。
イライラした気持ちが、甘い匂いのせいで少し収まっていた。
…今日は早く寝る予定だったけど、予定変更。
読みかけの本を読みたい。
残り3分の1だ。これからどんどんストーリーが面白くなって、ラストに向けて色んな動きがあるだろう。
読み終わって、一息ついて、物語の余韻に浸りながらベッドで横になるのが好きだ。
で、その物語の中で俺が生きているような夢を見る。