風
ほっそい腕に脚。
どんな生活してたらそうなるんだ。
飯食ってんのかな。
もしかしたらこいつ、まじで帰るとこないのかな。このまま俺が無視して放っといたらどうなんのかな。
じーっと俺の目を見つめてくる。
だけど俺がこれ以上何も言わなかったことで、諦めモードに突入したらしい。
「…わかりました。夜分遅くに、その、ご迷惑をおかけしました。ゆっくり…休んでください」
ぺこっと頭を下げて、そいつは背を向けた。
小さくて華奢な背中。
甘い香り。
「!あ、あの…?」
驚いた顔をした女が振り返ってもう一度俺の顔を見た。
びっくりした。
何にって、手首の細さに。
無意識のうちに俺は、そいつの手首を掴んで引き止めていたのだ。