風
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「…あったかい」
「そうか」
何してんだ俺。
こいつを家に上げて、体冷えてるだろうからってカフェオレまで与えて。
これ犯罪にならないだろうな。
拉致とか言われたらどーしよ。
ああめんどくせ。
「あのさ、もっかい聞くけどお前誰なの?」
「ですから、私は風ですと」
「へえ、答える気は無いってことか」
「え…」
部屋の中が甘い。
こいつのどこからこんなキンモクセイの香りがすんだ?
動いたり近寄ったりするたびにふわっと香る。
「なんで俺のこと知ってんだ。どこかで会ったことあんのか?」
俺が忘れてるだけだったら悪いけど、と付け足してみる。
女の顔はちょっと悲しそうだ。
「よく、お見かけします。一方的にですけど…とても優しい方だと前から思っていました」
「はあ!?」
よく見かける?なんだそりゃ。
まったく知らねぇ。
いや、それよりも俺のこと優しいって言ったか?こいつ。
馬鹿じゃねえのか。勘違いしてかわいそうな奴。俺ほど性格が捻じ曲がってる人間も珍しいと思うけど。