___




「…あったかい」

「そうか」



何してんだ俺。

こいつを家に上げて、体冷えてるだろうからってカフェオレまで与えて。

これ犯罪にならないだろうな。
拉致とか言われたらどーしよ。
ああめんどくせ。



「あのさ、もっかい聞くけどお前誰なの?」

「ですから、私は風ですと」

「へえ、答える気は無いってことか」

「え…」



部屋の中が甘い。

こいつのどこからこんなキンモクセイの香りがすんだ?
動いたり近寄ったりするたびにふわっと香る。



「なんで俺のこと知ってんだ。どこかで会ったことあんのか?」

俺が忘れてるだけだったら悪いけど、と付け足してみる。

女の顔はちょっと悲しそうだ。



「よく、お見かけします。一方的にですけど…とても優しい方だと前から思っていました」

「はあ!?」



よく見かける?なんだそりゃ。
まったく知らねぇ。

いや、それよりも俺のこと優しいって言ったか?こいつ。

馬鹿じゃねえのか。勘違いしてかわいそうな奴。俺ほど性格が捻じ曲がってる人間も珍しいと思うけど。





< 9 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop