失恋バレンタイン
「…あ、あの……その、さ…」
クエスチョンマークを浮かべながら、私の言葉を見守る君の視線が優しくて、痛くて。
言わなくちゃ。決めたから、後悔しないために。
恥ずかしさで、俯いていた顔をあげた。
「ずっと、前からす……」
「新太くん?」
『好きでした』。その言葉は鈴のようなコロコロとした儚い声にさえぎられた。
私の声に乗る筈だった言の葉は宙に浮かんで昇華されていく。開きかけた口を、2、3回パクパクさせた後、ゆっくりととじた。
「茉莉ちゃん、どうした?」
茉莉を見る君の目は、いつもの何倍も優しくて、暖かくて、嬉しそうで、輝いていた。
分り易すぎて、嫉妬とかそんなドロドロとした醜い感情よりも先に、諦めの乾いた笑いしかできない。
ほんと、分かりやすいんだから。昔から、そう。
「あれ?松川さんと一緒?」
「う、うん。ガトーショコラ、もらったんだ」
たった今渡したガトーショコラを、君は近所の人におすそ分けを貰ったようなテンションで茉莉にみせる。
「あの、新太くん。お話……あるんだけど、良いかな?」
茉莉は少し複雑そうな顔をした後、顔を紅くして、うつむき加減にそう言う。
普段は絶対に働かない、女の勘とやらが私に警報を出す。
だめだ。今、君を行かせたら、言えなくなっちゃう。内心焦る私に、君は少し困った顔をして、茉莉に断りを入れてから私にさっきの言葉の続きを促した。
「あー……ちょっと待って…。志乃、何か言いかけてたよな?ずっと前から、なに?」
首を傾げて、笑顔で。
茉莉がいるのに、言えるわけ無いじゃん。バカ。ほんと、デリカシーないわ。
だけど、好きな子の前でも、私のことをないがしろにしなかった事実が嬉しくて、愛おしくて。この想いを伝えたい、なんてこの場に及んでまで考えてしまう。
「えっと……ずっと、前から……」
私の口が、勝手に動いてしまう。
あぁ、駄目。止まれ、止まれ。私の口。
私は口を強制的に閉じて、深呼吸をした。
「……思ってたんだけど、あんたってホント鈍感ねって言いたかったのよ!」
良くやった、私。もう少しで、君の願いが叶いそうなのに、私の我侭で気まずくしちゃ、ダメだよね。
「なんだよ、それ。ひどくねぇ!?」
私の気持ちや葛藤なんて露知らず、君は腹を抱えて、ケラケラと笑う。
うん、これで良かったんだ。
「ほら!茉莉が話あるって言ってんじゃん」
さりげなく、君の背中を押してあげる。
「お、おう」
茉莉に一歩近づくだけで、顔を赤らめる、君。
小学生みたいに、ウブな奴。
「じゃぁ、ごゆっくりね」
さっき言ったとおり、ここは人通りが少ないから告白にはちょうどいい。
私の告白の機会はなくなった。今度はあの子の番。私は、邪魔者だ。
フフッと笑い、手を振って、階段を駆け下りた。
クエスチョンマークを浮かべながら、私の言葉を見守る君の視線が優しくて、痛くて。
言わなくちゃ。決めたから、後悔しないために。
恥ずかしさで、俯いていた顔をあげた。
「ずっと、前からす……」
「新太くん?」
『好きでした』。その言葉は鈴のようなコロコロとした儚い声にさえぎられた。
私の声に乗る筈だった言の葉は宙に浮かんで昇華されていく。開きかけた口を、2、3回パクパクさせた後、ゆっくりととじた。
「茉莉ちゃん、どうした?」
茉莉を見る君の目は、いつもの何倍も優しくて、暖かくて、嬉しそうで、輝いていた。
分り易すぎて、嫉妬とかそんなドロドロとした醜い感情よりも先に、諦めの乾いた笑いしかできない。
ほんと、分かりやすいんだから。昔から、そう。
「あれ?松川さんと一緒?」
「う、うん。ガトーショコラ、もらったんだ」
たった今渡したガトーショコラを、君は近所の人におすそ分けを貰ったようなテンションで茉莉にみせる。
「あの、新太くん。お話……あるんだけど、良いかな?」
茉莉は少し複雑そうな顔をした後、顔を紅くして、うつむき加減にそう言う。
普段は絶対に働かない、女の勘とやらが私に警報を出す。
だめだ。今、君を行かせたら、言えなくなっちゃう。内心焦る私に、君は少し困った顔をして、茉莉に断りを入れてから私にさっきの言葉の続きを促した。
「あー……ちょっと待って…。志乃、何か言いかけてたよな?ずっと前から、なに?」
首を傾げて、笑顔で。
茉莉がいるのに、言えるわけ無いじゃん。バカ。ほんと、デリカシーないわ。
だけど、好きな子の前でも、私のことをないがしろにしなかった事実が嬉しくて、愛おしくて。この想いを伝えたい、なんてこの場に及んでまで考えてしまう。
「えっと……ずっと、前から……」
私の口が、勝手に動いてしまう。
あぁ、駄目。止まれ、止まれ。私の口。
私は口を強制的に閉じて、深呼吸をした。
「……思ってたんだけど、あんたってホント鈍感ねって言いたかったのよ!」
良くやった、私。もう少しで、君の願いが叶いそうなのに、私の我侭で気まずくしちゃ、ダメだよね。
「なんだよ、それ。ひどくねぇ!?」
私の気持ちや葛藤なんて露知らず、君は腹を抱えて、ケラケラと笑う。
うん、これで良かったんだ。
「ほら!茉莉が話あるって言ってんじゃん」
さりげなく、君の背中を押してあげる。
「お、おう」
茉莉に一歩近づくだけで、顔を赤らめる、君。
小学生みたいに、ウブな奴。
「じゃぁ、ごゆっくりね」
さっき言ったとおり、ここは人通りが少ないから告白にはちょうどいい。
私の告白の機会はなくなった。今度はあの子の番。私は、邪魔者だ。
フフッと笑い、手を振って、階段を駆け下りた。