続・生意気毒舌年下男子
番外編 幸来の凄さ
雫side
☆雫side☆
私はパパが、大好きだった。
ママは私が幼い時に病気で亡くなり、それからはずっとパパが育ててくれた。
パパは近所で、お父さん―――私にとってはお祖父ちゃん―――から受け継いだスーパーを経営していた。
スーパーは特別儲かっているわけではなかったから、裕福ってわけではなかったし、だからと言って貧乏でもなかった。
でも私は、貧乏でも裕福でも、気にすることはなかった。
私は放課後になると、毎回スーパーへ行き、パパや他の店員さんと一緒に遊ぶことが多かった。
店員さんは皆優しくて、私が行くと毎回「雫ちゃん!」と喜んでくれた。
結婚していない人、子どもがいるものの大きくなって家を出て行った人が多かったから、私はきっと、店員さんたちにとっては孫のような扱いだったんだと思う。
パパは深夜まで忙しく働いていたけど、休日は凄く優しかったし、夜遅くなる日でも店員さんたちが遊んでくれたから、私は寂しいと思わなかった。
ある日。
私は副店長の木原(きはら)さんから、最近万引き犯が多いことを知った。
万引き防止のセキュリティをつけたいものの、経営状況が良くなかった時期なのでつけることが出来ないと、木原さんは私のブランコを押しながら教えてくれた。
「早く万引き犯、捕まると良いね……」
「そうだな」
後日、万引き犯は捕まった。
私と同い年の、中学2年生の綿貫沙羅だった。
捕まえたのは、副店長の木原さん。
綿貫沙羅はよく食品売り場で見かけることが多く、「今日も来ているんだな」と見たところ、綿貫沙羅は万引きをしたらしい。