男っぽい女の子の恋愛事情。





「か、かえんねぇの?」




「凛とこ、待ってた」





「は?」





「だから、凛とこ待ってたの。
ほら行くぞ」



そう言って私の鞄を持ちながら立ち上がる優



は?



何言ってんのコイツ




私を、待ってた?



「…なんで?」




「帰りのHRで変質者が出てるって言ってたから」




だからって、私のこと待ってたのか?




「…小林先輩は…?」



優には、小林先輩がいるじゃんか



「……知らね」




プイッとそっぽを向いて答える優



彼女じゃ、ねぇの?




「…なぁ、小林先輩と付き合ってるって、ほんとか?」



「…………まぁ」




……っ



答えなんて分かってたのに



もしかしたら嘘かも知れないと思った私がバカだった




付き合ってるって、分かりきってることを聞いて、どうすんのさ




「じゃ、じゃあ小林先輩のとこ行けばいいだろ!」



私はキッと優を睨みながら言う



ほんとは「待っててありがとう」って言いたいのに




「帰ろっか」って言って、並んで帰りたいのに




泣きそうになる私には、正反対の言葉しか出てこなかった




「……凛は、俺が華先輩と付き合うって言われてもなんとも思わないのか?」




寂しげな瞳でこちらを見る優




なんだよなんだよ



小林先輩のことが好きなくせに!




「っ、お、思わない!
私もう帰るから!じゃあね!」




ほんとは嫌だって思ったのに



小林先輩のところに行って欲しくないと思ったのに



私の口からはそんな言葉しか出なかった




バッと優から私の鞄を奪い、教室から飛び出す


「ちょ、凛!」




後ろから優の焦った声が聞こえた




そうやって私のことを心配するのも



私が優の「幼なじみ」だからなんでしょ?




だったらもう、優しくしないで




そんな優しさなんていらないから




優しさなんていらないから…




どうか、小林先輩の所へ行かないで…っ





私は家まで全速力で走って帰った




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