セカンド・チョコレート

「花名ちゃんのチョコの次に食べてね」


 あたしがそう言うとお兄ちゃんは少し困ったような顔をした。


「最初に食べるのは花名ちゃんのでいいよ。でも二番目に食べるのはあたしのチョコにして。他の人にもらったやつはその後にして」


 冗談でもなんでもなくあたしは大真面目だ。
 愛しの彼女には適うべくもないけど。そんなのちゃんと分かってるけど。だから今更駄々を捏ねたりはしないけど。お兄ちゃんにとって『二番目の女』の座は絶対に譲らない。
 だってこうして一番に渡せる立場だって今年が最後だ。秋に花名ちゃんと結婚式を控えてるお兄ちゃんは来年のバレンタインにはこの家にいない。


「お前我儘だなあ」


 お兄ちゃんの手がくしゃりとあたしの頭を撫でる。さっき頑張ってブローした髪がちょっと乱れたけどお兄ちゃんなら許す。
 どうせブラコンですよ、自覚あるし。十二歳も離れた兄に生まれた時から甘やかされてるんだもん、ブラコンになって当然じゃん。初恋だって相手はお兄ちゃんだ。


「二番目ね。絶対だからね!」

< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop