セカンド・チョコレート

 念を押すあたしに苦笑して見せながらお兄ちゃんは、その場でラッピングを解き始めた。包装紙を破かないように丁寧に剥がしていく。
 箱の蓋を開けるとふわりと甘い香りが漂ってくる。


「じゃ、今年は美紅のが一番て事で」


 お兄ちゃんの指がチョコを一粒摘み上げる。パクリ、一口。あたしの作った生チョコがお兄ちゃんの口に消える。


「ん、美味い。いいな、これ。俺は好きだよ」


 ココアのついた指を舐めながらお兄ちゃんが笑う。
 我儘って言ったくせに、食べてくれた。ほらやっぱりお兄ちゃんはあたしに甘い。


「いいの?」


「花名子には内緒な」


「……ありがとう」


 でも、優しい花名ちゃんはこんな事に本気で怒ったりしない事をお兄ちゃんもあたしもちゃんと知ってる。チョコの順番くらいでグダグダ言うような人じゃない。二人はあたしよりずっと大人で、ブラコンこじらせてる妹の我儘くらい笑い飛ばせてしまうだろう。
 大人っぽいチョコを作ったって。同級生男子なんか子供っぽいなんて思ったって。あたしは所詮大人じゃないし、お兄ちゃん達には絶対に追いつけない。

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