セカンド・チョコレート

「お前もその内俺に二番目のチョコしかくれなくなるよ」


 そう言いながらお兄ちゃんはもう一つチョコを摘んだ。


「ほら美紅」


「え?」


 そのまま指であたしの口に押し込む。
 舌の上でとろりとチョコが溶けて、口の中にカカオとミルクの味が広がっていく。その後ろに微かに感じるグランマニエのオレンジ。ビタースイートな風味の中に見え隠れするリキュールのドライさ。これを大人っぽい味って言うんだろうか。


「美味いだろ」


 お兄ちゃんが笑う。
 ……知ってるよ、自分で作ったんだから。味見だって何回もした。


 本当はあたしはビターなブラックよりミルク感たっぷりのチョコが好き。リキュールの風味よりキャラメルみたいな濃厚な甘さがいい。
 でもいつかあたしもこのビターな味の方がいいってなるのかな。そしてその時はお兄ちゃん以外の誰かに一番に食べて欲しいと思うようになるんだろうか。


「残りは帰ってから食べるから」

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