風紀委員長のとある事情
風紀委員会室のドアノブに手を掛けると心を落ち着かせるようにひとつ深呼吸してからドアを開けた。
視界に真っ先に入ったのは黒を基調とした応接セットと校長っぽい机とチェアに座る千堂だ。
詩織が一歩足を入れたここはどこでもドアを開けてしまったのかと疑ってしまうぐらいの部屋。
周りを見渡すと、フタの真ん中部分を押す古いタイプのポットに急須などのお茶セットが一人暮らし用の冷蔵庫の上にあったり観葉植物までもがある。
本当の校長室かと思うぐらい。
「ノックも無いなんてある程度の常識は無いんですか? 甲斐原さん」
部屋に驚く詩織をメガネ越しに捉えた千堂が口を開いた。
「すいません...」
「自分が呼ばれた理由分かりますか?」
キスの件だろうが。
「朝会の...」
「昨日の朝のことです」
分かり切った質問をする同い年のくせに上からな千堂に、反抗するような気持ちで言った言葉はすぐさま却下される。
人と話してるのに腕組んでる感じとかやたら上からな目線と口調にすでに苛ついてはいるが、詩織も落ち着いた態度で返す。