風紀委員長のとある事情
不気味に思いながら恐る恐る画面を見ると千堂拓真の文字が表示されている。
一瞬"無視"という二文字が頭に浮かんだが、なんで電話に出ないとかガミガミ言われそうなので出ることにした。
「もしもし」
「遅い」
一日の始めに文句を言う人とは話していたくないので早めに用件を聞く。
「...朝からなんですか?」
「甲斐原さんはお昼ご飯っていつもお弁当ですよね?」
「まぁ、はい」
嫌な予感しかしない質問に詩織の警戒心が眉間にしわを寄らせていく。
「じゃあ......今日から俺の分も作ってください」
千堂の淡々とした口調にイラつきはするが、焦りはしない。
焦ったらこっちが負けだ。
焦りが声に出ないように気をつけながら口を開く。
「随分、急なことですね」
「じゃあよろしくお願いします」
「あっ、ちょっ...」
早速焦ってしまった口を閉じている間に千堂から電話を切られてしまった。
詩織は千堂への鬱憤をスマホをベッドに叩きつけることで晴らしてからキッチンを振り返る。
しょうがない。
キーホルダーのためだ。
そう自分に言い聞かせながら二人分のお弁当作りに集中した。