風紀委員長のとある事情
「あっまだ自己紹介してなかったね。えっと拓真の友達で3年の松永圭人です、よろしくね!」
そう言って差し出された手に戸惑いながらも、その手を握ると松永さんはより笑顔を輝かした。
「ところでさ。詩織ちゃんは拓真のこと好きなの?」
そのままの笑顔で、手を繋いだまま、
急な質問の方向転換に戸惑いを隠せず答えを迷っていると、
繋いだ手をグイっと引っ張られ詩織は松永さんの胸の中に無防備にも収まってしまった。
「拓真にはね、好きな人がいるんだ。でもその好きな人は詩織ちゃんじゃない、他の人なんだ」
急な事に驚く間もなくさっきまでとは違う一段と低く囁かれる声が詩織の耳を貫いた。
「だから...」
「おい、何してんだよっ」
千堂の声と共に松永さんの言葉は途切れ、詩織は繋がれていた手を引き離され千堂の胸に背をぶつけた。
「どういうつもりだ、圭人」
「別に。詩織ちゃんと話してただけだよ」
ついさっきまで優しく感じられた松永さんの笑みがまるで小悪魔の笑みに見えた。
「行くぞ」