風紀委員長のとある事情
そう言って風紀委員会室へと詩織の手を引く千堂の横顔は、
怒った表情をしているがほんの少し悲しさが見えたような気がした。
「またね。詩織ちゃん」
図々しくも手を振る松永さんだけど、風紀委員会室のドアが閉まる寸前、
垣間見えたのは笑顔なのに、ほんの少しの悲しさがある松永さんの姿だった。
「何か言われたか?」
風紀委員会室のドアが閉まるとすぐに詩織の手を離した千堂にそう聞かれて詩織は答えた。
「別に......何も無いです」
知っていたというか、
気づいていた事だ。
千堂が自分のことを好きじゃないなんて事は、それなのにほんの少し心が苦しかった。
これ以上深追いしてはダメだ。不可解なものが掘り起こされてしまう。
そう瞬時に思った。
だから何も言われなかった事にした方がいい。
苦しかったこと自体無かった事にしてしまおう。
千堂と付き合うのはキーホルダーのためなんだ。
そう自分に言い聞かせて、詩織はお昼のお弁当をテーブルに置いた。