風紀委員長のとある事情
「どうですか? 味」
「一番美味しいのは、唐揚げだな」
「それ冷凍ですけど」
「じゃあ、グラタン」
「それも冷凍です」
「じゃあほうれん草と...」
「それも冷凍」
「じゃあ、トマト」
「それも......ていうかトマトは冷凍でもないし、私が育てた物でもない!」
立ち上がって我慢していた怒りを爆発させる詩織に、千堂はわざとか分からないが火に油を注ぐような事をする。
「一番ダメなのは.........卵焼き。俺、甘い卵焼きの方が好き。あとこれ、」
そう言うと箸で上げて見せたのはタコさんウィンナー。
「もしかして初めてやった?足の切り方とか下手」
「べ、別に初めてじゃないですし、卵焼きは私の自信作ですよ!」
「は?なんか焦げてるし味も俺の好みじゃない」
「お前の好みに合わせて作ってねえよ!」
嘲る口調に怒りを浴びせた詩織に、千堂はポケットから出したピンクの勾玉キーホルダーを見せながら、
「明日から俺好みの卵焼きを作る事、いいな?」
卵焼き一つで脅しをする千堂に詩織は呆れ果て、意地で返事をかえさず無言でお弁当を平らげた。