風紀委員長のとある事情
振り向くとそこには同学年で風紀委員長の千堂拓真の姿があった。
長身でシャープな顔つき。
触れなくてもわかるまっさらな黒髪。
銀縁メガネの奥にはつりあがった目。
目に入る全ての情報が、
"冷静"で"賢い"そんな印象を与え、
自分なんかより位が高いことが一瞬で分かる。
まさに“風紀委員長”という感じだ。
制服チェックか? 持ち物検査か? まさか朝会サボってること...
心臓をバクバクと鳴らしているといつも教室から聞いていたあの声が降り注いだ。
「あの...2年A組の甲斐原詩織さんですよね?」
「はい」
「ちょっと、伝えたいことがあって...」
「拓真、先生が呼んでるぞ」
千堂が何か言おうとした時、千堂を呼ぶ声が。
拓真呼び!?
この風紀委員長を名前で呼ぶ人なんているのか!
顔には出さず心の中で驚きながら千堂の影に隠れてしまっている"名前呼び"する人を見る。
千堂よりは低いが詩織より高身長で、さらさらそうな茶髪に千堂に負けず劣らずの顔の持ち主。
どこかで見たような気がする......
「分かった」
詩織が目を細めてみたり記憶の棚を探ってみたりしていると、振り返って返事をする千堂。