幕末の恋と花のかおり【完】
ひと通り巡察が終わり、隊員たちには、先に屯所に帰ってもらい、私と八十八で後ろをつけている人たちの様子を探ることにした。
そして、数分後。
「新撰組、覚悟!!」
背後から声がして振り返る。
すると、後ろには、十数人の浪士たちがいた。
予想通りだ。
「あなた達は誰ですか。」
少し怖いけど、ここでは普通の女子高生ではいられない。
「名を聞くときはさきに名前をのべるのが筋だろう」
こういう男は腹が立つ。
怒りを抑えながらも、きちんと名前を答える。
「新選組、十一番隊隊長、松田花織。」
「同じく新選組、十一番隊、山野八十八。」
「こんな細っちいやつが隊長で大丈夫かぁ?新選組」
そう言ったのは、男達の中の誰か。
私の中で何かが切れた。
ただただ、悔しかったのだ。大好きな新選組のことを馬鹿にされたことが。
いつの間にか、花織にとっての新選組は大切なものとなっていたようだ。
精一杯、その浪士たちを睨む。
すると、その中の一人が刀を抜いて、周りも一斉に刀を抜いた。
それにあわせ、私と八十八は背中合わせになる。
「後ろ任せたよ、八十八。」
「任せてください、隊長。」
それから私は斬りかかってくる浪士たちをできるだけ気絶させた。
でも。
一人だけ、
斬り殺してしまった。
私は、人生で初めて、この手で人を殺してしまったのだ。