幕末の恋と花のかおり【完】
いつの間にか日は沈んでいた。
「入ってもいい?」
沖田の声がした。
「どうぞ〜。」
彼の手には、一枚の水色の浴衣があった。
「これ、姉さんが京に来る時に私にもたせたんだ。忘れて欲しくない人ができたら渡しなさいって。」
十一番隊のみんなや、幹部のみんななど。
新選組の人たちはどうして、こんなに、優しいんだろう。
「本当はね、これ誰にも渡すことないだろうなって思ってたんだ。だけど……
君にはいい意味でも、悪い意味でも忘れて欲しくないよ。
だから、あげる。」
「沖田さん……。ありがとう。
私も、絶対忘れないよ!
だって、ほら……。沖田さんのこと忘れたらあとで斬られそうじゃない。」
「確かにそうですね」
冗談を交わして、沖田が部屋から出た。
きっと私はこの浴衣を見る度に、美しい幕末の京を、新選組での日々をおもいだすのだろう。
忘れるはずがない。