幕末の恋と花のかおり【完】
その日の夜。
私は全く寝付けなかった。
夕餉が終わってすぐに布団に潜ったはずなのに、今はもう人の生活する音も聞こえず、ただ静まり返っている。
目をつぶると、すぐにあの浪士の苦しそうなうめき声と、人を斬ったあの感覚が手に戻ってくる。
「外で空気でも吸うか。」
そう呟き、襖を開けて外へ出た。
すると、外は、風が吹いていた。
寝間着のままだったので、一月の夜風が冷たくて、気持よかった。
京都の冬は寒い。
しばらくすると、指先が冷えてきた。
紫色になった指先が震える。
それの理由は寒さだけではなかった。