幕末の恋と花のかおり【完】
俺は、精一杯生きた。
出来る限りのことをして、戦って、誰かの役に立とうとした。
こうして敵に撃たれ、重傷を負い、自らの命がそう長くないと察している俺を、笑いますか?
松田花織さん、君と出会ってから、いつでも新選組にかける覚悟でいた命が、少し惜しくなった。
君とともに生きていたいと願ったからだ。
花織がそちらへ帰ってからは、毎日は色彩が消えたかのように思えたよ。
それでも戦いをやめなかったのは、この隊が好きだったから。
そして、未来を繋げたかったから。
こんなんでも一応、命を懸けて花織のいる世界を守ろうとしたつもりなんやで。
この想いは届くだろうか。
輪廻転生が本当にあるとするのなら、もう一度。
君に会いたい。
話したい。
抱きしめたい。
この手で花織を守りたい。
俺は君のいる未来が幸せであることを願っている。
山崎烝という一人の人間として、宝物だらけの色彩がない世界に感謝を告げたい。
この世に生まれさせてくれてありがとう。
人を愛する喜びをありがとう。
この目を閉じて、何もかもがなくなった先がどうか、
君の元へと続きますように。