幕末の恋と花のかおり【完】
私がその下品男に酌をしていると、
「花香ちゃん。俺にも酌してー。」
割とかっこいい若い男性に言われた。
年は二十三歳くらいだろうか。
「へえ。只今。」
愛想笑いをして、下品男から離れる。
「おまっとさんどした。」
とりあえず笑ってみる。
私は男の人に名前を聞いてみた。
「お名前教えてはりますか?」
「栄太郎だ。」
栄太郎ということは...
長州の、吉田栄太郎!?
「おおきに。」
興奮して暴走しそうなのを抑えて、お礼を言う。
すると、栄太郎は笑顔になった。
私の仕事は、あくまでも長州の計画を探ること。
私はお酒を注ぎながら、質問をした。
「栄太郎はん。壬生狼の屯所を襲うってほんまどすか?」
あやしまれないように、新選組を嫌っているように思わせるために、新選組ではなく壬生狼といった。
「本当だ。
それより、花香ちゃん。君には心に決めた男性はいるのか?」
吉田に聞かれて、角屋に行く途中の山崎が心に浮かんだが、必死に自分自身に違うと言い聞かせた。
「......っ。心に決めた男性なんて、おりまへん!!」
数秒の静寂。
「なら遠慮はいらないね」
そして、花織は手首をつかまれ立ち上がらせられる。
そんな彼の顔には妖艶な笑が浮かんでいた。