幕末の恋と花のかおり【完】
「良い打ちだね! でも、少し遅いし、曲がるから右手の力少し抜いてみて!」
「はい!」
安藤はいいやつだ。
花織は直感的にそう思った。なぜなら、注意をすると凄く素直に返事をし、すぐに直そうと努力をするからだ。
「ヤア!」
安藤が振った竹刀を花織はよけ、後ろにまわった。
ーーーー後ろへの警戒心を忘れずに......。
そう言おうとしたときだった。
「花織ー! 古株の幹部もいるから、土方さんの部屋に来てー!」
平助が花織を呼びに来た。
そこで練習は中断されることになった。
「安藤、悪い! ちょっと行ってくるから、稽古、終わりにして休んでていいよ。
注意したことを忘れずにね!」
そう告げると花織は平助を追いかけた。
そして、その後、花織は後悔することになる。
ーーーー後ろへの警戒心を忘れずに
安藤にその一言を伝えなかったことを。
ずっと、後悔することになる。